新聞は生き残っていけるか?

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新聞販売店への影響も深刻

   筆者は、朝日新聞に38年近く勤めた経験を持つが、新聞記者ではない。その大半を販売局に席を置いており、本書は、いわゆる新聞編集ではなく、新聞販売の視点から書かれている。したがって、紙幅の多くが新聞社と販売店の関係に割かれている。

   日本の新聞販売の最大の特色は、戸別配達だという。毎日、4200万部の新聞が発行されているが、このうち95%の新聞が宅配されている。全国に1万6000の新聞販売所があり、30万人の配達スタッフが働いている。今では、中高生の「新聞少年」は姿を消し、家庭の主婦や別に本業を持つ人が多いそうだ。何と、新聞奨学生の応募者が激減し、近年の主流は中国・モンゴル・ベトナムなど海外からの留学生だという。

   新聞読者の急減は、販売店の経営にも打撃となっており、配達スタッフは、ピーク時(1996年)の48万人から4割近く減った。さらに、新聞社の経営環境の悪化は、専売制・テリトリー制の下、立場的に弱い販売店にとって、残紙(販売店が抱える配達されない新聞)の増加という形でのしかかる。不幸なことに、この残紙問題をめぐって、新聞社と販売店の間で訴訟(いわゆる「押し紙裁判」)となるケースが増えているという。

   筆者曰く、「販売店から提訴されること自体が、新聞ビジネスモデルの破綻の表れ」であり、「発行本社が裁判に至る病根を断ち切らなければ、つまり残紙を解消しなければ、新聞社に未来はない」と指摘する。

   毎月、週末になると、我が家に販売店のおじさんが集金にやってくる。先週末も、夕方にやってきた。

「いつも、ご購読いただき、ありがとうございます」

愛想よく、お礼を言ってくれる。

   ちょうど、販売店の様々な辛苦が書かれた本書を読み終えたばかりだったから、評者も、大変恐縮して、「いや、こちらこそ、本当にありがとうございます。いつも、じっくり味わって読ませていただいています」と頭を下げた。

   雨の日も雪の日も、毎朝夕、我が家まで新聞を届けてもらえるなんて、実に贅沢なことなのだと、しみじみと感じた。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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