内外に一つは趣味を
この話、私にとっても切実である。いちおう物書きなので在宅時間が長い。退職し、さあ遊ぼうと思った時、たいていのオジサンは本職が趣味に近かったことに気づく。
人生うまくいかないもので、若いころにはカネがなく、働き盛りは時間がない。時間が自由になるリタイア後は、体力の残量に黄信号がともる。
「老後をエンジョイするには、野外と室内の趣味をそれぞれ一つは持つべし」
そう説いたのは、多趣味で知られた大橋巨泉(1934-2016)である。
巨泉のようにゴルフとジャズ、釣りと麻雀でもいいし、山歩きに手芸、ドライブと料理、競馬とパチンコ...なんでもいい(飲み歩きとゴロ寝の取り合わせは非推奨)。
私が思うに、いくつか前提がある。なにごとも老後に楽しみたいなら、若いころから細々とでも嗜んでおくのがよい。もう一つ、夫婦そろっての趣味は理想とされるが、どうだろう。家庭外への広がりに欠けるし、見慣れた、あるいは見飽きた顔が見え隠れしては、お互いときめかないではないか。
カネと体力がそれほど要らず、家の内外でだらだらと楽しめて、新たな出会いも期待できる。そんな趣味を求めれば、私のようにSNSの迷宮にたどりつく。
別室でスマホやパソコンをいじり、食事どきはレンチンの順番待ち。これで老夫婦は、たぶん数か月は円満である。
冨永 格