在宅夫のトリセツ 小川有里さんが決めた「晩ご飯作らんデー」

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

内外に一つは趣味を

   この話、私にとっても切実である。いちおう物書きなので在宅時間が長い。退職し、さあ遊ぼうと思った時、たいていのオジサンは本職が趣味に近かったことに気づく。

   人生うまくいかないもので、若いころにはカネがなく、働き盛りは時間がない。時間が自由になるリタイア後は、体力の残量に黄信号がともる。

「老後をエンジョイするには、野外と室内の趣味をそれぞれ一つは持つべし」

   そう説いたのは、多趣味で知られた大橋巨泉(1934-2016)である。

   巨泉のようにゴルフとジャズ、釣りと麻雀でもいいし、山歩きに手芸、ドライブと料理、競馬とパチンコ...なんでもいい(飲み歩きとゴロ寝の取り合わせは非推奨)。

   私が思うに、いくつか前提がある。なにごとも老後に楽しみたいなら、若いころから細々とでも嗜んでおくのがよい。もう一つ、夫婦そろっての趣味は理想とされるが、どうだろう。家庭外への広がりに欠けるし、見慣れた、あるいは見飽きた顔が見え隠れしては、お互いときめかないではないか。

   カネと体力がそれほど要らず、家の内外でだらだらと楽しめて、新たな出会いも期待できる。そんな趣味を求めれば、私のようにSNSの迷宮にたどりつく。

   別室でスマホやパソコンをいじり、食事どきはレンチンの順番待ち。これで老夫婦は、たぶん数か月は円満である。

冨永   格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。
姉妹サイト