タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」
自分がどういう影響を受けて今の仕事をしているのか考えたことがあるだろうか。今の自分を形成している土台。ルーツと言えばいいかもしれない。
若い頃にはそこまで考える余裕もない。あったとしても認めたくない。今のスタイルは誰に影響されたわけでもなく自分で編み出したオリジナルであると思いたい。
時が流れキャリアを重ね、そうした若い頃のような頑なな気持ちも消えた頃になって、或る日それまで気づかなかったような自分の過去を思い知る。
2018年3月21日、5年ぶりのソロアルバム「TRUE WOMAN」を発売したNOKKOは、筆者が担当するFM NACK5のインタビュー番組「J-POP TALKIN'」(3月31日・4月7日放送)でこう言った。
「ずっと自分はロック界隈の人間だと思ってました。でも、日本語で歌ってきた。なぜ日本語で歌っていたのか、なぜこういう歌詞を書いていたのか、10代の時にユーミンや少女漫画に影響されてたんだって、今になって気づいたんです」
ユーミンに直接、曲作りを依頼
NOKKOは、84年にロックバンド、レベッカのヴォーカリストとしてデビューした。彼女はバンドの紅一点。作詞も手掛けていた。女の子の憧れや本音を歌った歌詞と男性メンバーを従えて踊りながら歌うコケティッシュなパフォーマンスはその後のガールズロックと呼ばれるジャンルのパイオニアとなった。85年に出た4枚目のアルバム「REBECCA IV~Maybe Tomorrow」は、バンドのアルバムとして初のミリオンセラーを記録。ほぼ同時期にブレイクしたBOO/WYと並んでバンドブームを象徴する存在になった。でも、91年に解散。彼女はソロになった。
「私は普通の人が3年かかることに10年かかるタイプだと思うのね。でも、それを追い越して認知度が先に行ってしまって、どこまでが自分かまったく分からなくなって。どこに行けば自分の声にあった音楽があるのか、自分のグループはどこにあるのか。世界中を旅したけど、どこにもなかった。やっと折り合ったのが今回のアルバムだと思います」
新作アルバム「TRUE WOMAN」は5年ぶり。メジャーからのオリジナルという意味では18年ぶりということになる。プロデュースはご主人のGOH HOTODA。マドンナのアルバムのエンジニアとして知られ、チャカカーンのアルバムでグラミー賞を受賞、宇多田ヒカルのアルバム「First Love」のエンジニア、音楽監督も務めた世界的エンジニアだ。3年前、彼がユーミンのアルバムに関わったことがきっかけだった。
「自宅のスタジオからユーミンの曲が聞こえてきて、それをお掃除しながら聞いている。これはどういうシチュエーションなんだろうと思っていて、そのことに気づいた。自分でも声が出るくらいにびっくりしました」
彼女はユーミンよりも一世代下になる。女性のロッカー自体が少ない中での自己主張。ポップスの女王として君臨していたユーミンに対しては対抗心の方が強かったに違いない。でも、音楽に目覚めた中学生の頃に聞いていたのは、確かにユーミンだった。そして、自分が書いていたガールズ・ライフの土台にもユーミンがいた。
アルバム「TRUE WOMAN」は、全10曲。一曲目の「ふふふ」は松任谷由実の作詞作曲。NOKKOは「死ぬまでにユーミンさんの曲を歌ってみたいんです」と直接お願いしました」と言った。