東日本大震災から7年目の春 後世のためにすべきことを考える

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■「リスクと生きる、死者と生きる」(石戸諭著、亜紀書房)
■「しあわせになるための『福島差別』論」(清水修二ほか著、かもがわ出版)

   東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から7年目の春となった。瓦礫(がれき)の除去やハコモノの整備は、時間の経過とともにそれなりに進んでいるが、この震災と原発事故の前と後では、みえる風景がまったく変わってしまった人々もたくさんいる。日々を生きていく一方、おのおのが、その人生を通じて起きたことをどう受け止めるか、皆が毎日毎日試行錯誤しているというのが、正直なところだろう。

   この問題に、当時、大手メディアの毎日新聞記者として取材を行った著者が、うまく受け止めることができなかった個々の喪失について、その後経験を深め、BuzzFeed Japan記者となり、やっと言語化してネット記事とした。それを大幅に加筆して世に問うた1冊が、「リスクと生きる、死者と生きる」(石戸諭著 亜紀書房 2017年9月)である。

起こったことをきちんと伝えていく重要さ

   著者は、序章で、「喪失との向き合い方というのは、徹底的に個人のものでしかありえない。ある人を喪った、土地を離れざるを得なかった。失ったのはいずれも、自分が自分であるための大事な基盤である。その喪失と個々人がどう向き合っているかは、他人にはわからないものだ。いや、当事者であってもわからないことも、当事者であるから言葉が揺らぐことも、言葉にできないこともある。それゆえに、誰かの経験を、誰かに代わって語ることに、慎重にならないといけないのではないか」と問いかける。そのような想いから「科学の言葉と生活の言葉」、「死者と対話する人たち」、「歴史の当事者」の3章が編まれた。

   ちょうど、震災直後ツイッターで詩を書き、それをまとめた「詩の礫(つぶて)」が大きな反響を呼んだ福島市在住の詩人和合亮一さんのインタビュー記事が、3月17日付読売新聞朝刊の連載「震災7年 福島は問いかける」に出ていた。彼は、教師でもあるが、震災後、福島の子どもが書いた作文で、「自分の抱えている問題はあまりにも大きすぎる。自分が大人になっても、自分の子どもでも解決できないと思う。だったら、孫やひ孫にそれを伝えたい。そのために自分は今、一生懸命勉強したいとつづってあった」とし、勉強し、感覚をとぎすまし、起こったことをきちんと伝えていく、その重要さを指摘する。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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