初演時から大評判に
象徴派の詩人、ステファヌ・マラルメが書いた「半獣神の午後」という詩に啓発されたドビュッシーは、この詩に対する3部作の音楽を書くことを思い立ちます。結局は、第1部の「前奏曲」しか完成しなかったのですが、1892年から1894年にかけて書かれた曲は、それまでの伝統的クラシック音楽から脱却した「新しいドビュッシー」もしくは、「真のドビュッシー」の姿を示しており、彼の出世作となっただけでなく、近代音楽史の転換点となったのです。
物憂げなフルートソロで始まるこの曲は、聴く人々にマラルメの詩の世界、ギリシャ神話にモチーフを得た、けだるい午後を確かに「感じさせること」に成功し、この曲は初演時から大評判となります。その後、彼自身によるピアノ2台の編曲や、パリで人気となったロシア・バレエ団の音楽として使われることによって、ますます人気を得、近代フランス音楽と、クラシック音楽の重要作品として歴史に名を刻むことになりました。
長調・短調といった伝統的なハーモニーや、それまでのさまざまな様式から自由になった革命的なこの曲は、当時の人々にも、そして100年後の我々の耳にも、いまだに「新しさを感じる詩的な風景」を届けてくれています。
本田聖嗣