仮想通貨と芸人 オール巨人さんから後輩へ「本業で稼ごう」

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大御所の存在価値

   オール阪神・巨人の結成から43年になる。しゃべくり漫才の本流にして、お笑い界の大御所だ。御年66歳の巨人さん。週プレのこの連載では、審査員を務める「M-1」についての事後解説や有望新人の紹介など、率直な筆致が目立つ。業界関係者なら必読だろう。

   すでに30回を数える師匠のコラムに、私は漫才師としてのプライドと、所属する吉本興業にとどまらない後輩たちへの愛を感じている。お借りした回は、余計なリスクを抱えることで本業を疎かにするなかれという、強く、真っ当なメッセージである。

   各界の一線で長く活躍する人たちには、その人にしか言えないことを、時宜を得て発信する役割が求められている。これぞ大御所の存在価値だ。

   仮想通貨の将来性はさておき、投機対象となった現状は危うい。小豆と同じ相場商品である。一攫千金でもうけても、あぶく銭は本職の緊張感を殺いでしまうだろう。

「要するに男を駄目にするのは、僻地であれ都会であれ、イージーな生活とイージーな金ですよ」

   開高健(1930-1989年)が、対談でそんな言葉を残している。相手は植村直己(1941-1984年)である。イージーなカネと暮らしは、もちろん女もダメにする。

   内外にイージーなカネがあふれ、バブル再来とまで言われる昨今、巨人さんの本業へのこだわりは時代への鋭いツッコミとなっている。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。
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