「これが見納めになったらいやだな」
もう一つの功績が「ライブ」だと思う。
コンサートの質を変えた。
ステージに象が登場したりエスカレーターやエレベーターやプールが設置されたり、果ては空中ブランコまで取り入れられた。エンターテインメントとしてのコンサートという大命題の追求。繊細なピアノ少女がライブの女王に成長してゆく。
「ひこうき雲」は、2013年にジブリの映画「風立ちぬ」の主題歌になって再び脚光を浴びた。
40年前の曲が「最新」の情報として独り歩きする。そこから離れたはずの「過去」が「現在」と一体になるという経験をした現役アーティストは多くない。彼女はどう対処するのだろうと思った。メビウスの輪のようになった時の流れをどう受け止めてゆくか。2013年のアルバム「POP CLASSICO」は、その答えのようなアルバムだった。「POP」と「CLASSICAL」。過去に戻るのでも否定するのでもなく融合され進化してゆく。
「ひこうき雲」の発売日に始まったそのツアーで彼女はピアノの前に座ることなく「ひこうき雲」もハンドマイクで歌った。それは、ライブアーティストとしての歌への自信と自負の表れのように思えた。
アルバム発売45年、「SONGS&FRIENDS」のステージでレコーディングメンバー、ティン・パン・アレイと歌い終え、彼らを見ながら「これが見納めになったらいやだな」といたずらっぽく笑う彼女はあどけない少女のようだった。
(タケ)