2011年3月11日の東日本大震災から7年の月日がたった。震災の記憶や悲惨な光景は忘れがたく、今もなお原発や放射能汚染、仮設住宅閉鎖や移転など、さまざまな問題を抱えている。今回は、震災の記録はもちろん、近く起こると言われる首都直下型や東海・東南海の地震への対策など、今後についても考えさせられる3冊をご紹介。
J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ(http://books.j-cast.com/)」でも特集記事を公開中。
主体的な避難行動を可能にした「防災教育」
東日本大震災で大津波に襲われた岩手県釜石市では、小中学生が主体的避難行動で自らの命を守った。子どもたちはなぜ命を守ることができたのか?そこには、震災前から地道に積み重ねられてきた、画期的な「防災教育」の効果があったという。
『人が死なない防災』(著者:片田敏孝 集英社 821円)では、2004年から釜石市の危機管理アドバイザーを務めてきた著者が、主体的な避難行動を可能にした「防災教育」のノウハウを余すところなく公開。いつ災害に襲われるかわからない私たちすべてが知っておかなくてはならない「生き残るための指針」を徹底公開してくれる。
「人が死なない防災―東日本大震災を踏まえて/安全な場所はどこにもない・釜石市の主体的行動に学ぶ・防災教育の本質・人が死なない防災」、「津波を知って、津波に備える―釜石高校講演録」、「なぜ、人は避難しないのか?」、「求められる内発的な自助・共助―水害避難を事例に」の全4章。
人びとの記憶からあきらかになる津波の真実
巨大な波に翻弄されたあの日、何が生死をわけたのか...。
震災時、本社ビルが津波で被災し、設備も整わず、社員自身も被災者でありながら、住民の安否確認を第一に、震災3日目から新聞を発行。多くの死と向き合いながら、必死に活動し、ひたすら住民たちに情報を届け続けた三陸河北新報社。新聞「石巻かほく」掲載の被災者のインタビューシリーズを書籍化した『津波からの生還 東日本大震災・石巻地方100人の証言』(編集:三陸河北新報社「石巻かほく」編集局 旬報社 1,620円)では、大津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市、東松島市、女川町で被災した100人の詳細な証言と当時の状況が分かる写真を多数掲載。津波から必死に逃げる中で何を思っていたのか、震災が過ぎ去って思うことを探っていく。
「災害流言」という人災のメカニズムを解く
"有害物質の雨が降る?""被災地で外国人犯罪が増えている?""放射性物質にヒマワリが効く?""ヨウ素入りのうがい薬は放射性物質に効く?""天皇陛下が京都に逃げた?"などなど...。東日本大震災当時、さまざまなデマやウソがSNSで蔓延した。
チェーンメールやリツイートから生まれるデマはどのように広がっていくのか?真偽を確認するにはどうすればいいのか? 『検証 東日本大震災の流言・デマ』(著者:荻上チキ 光文社 799円)では、そのメカニズムを解説し、ダマされない&広めない基礎知識を伝授してくれる。
「なぜ、今、流言研究か」、「注意喚起として広まる流言・デマ」、「救援を促すための流言・デマ」、「救援を誇張する流言・デマ」、「流言・デマの悪影響を最小化する」の全4章。