正座という苦役 吉田戦車さんが茶会に持ち込んだ秘具とは

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   FLASH(2月27日号)の「ごめん買っちゃった」で、マンガ家の吉田戦車さんが「正座イス」の効用を説いている。このコラム、最終ページの色刷りで、書き下ろしのひとコマ漫画が二つ添えられる。サブタイトルに「買いもの失敗成功日記」とある。

   舞台は、お子さんが関わる大学茶道部の茶会。2年前に初参加した吉田さんは、正座のきつさを思い知った。「茶席の趣向を楽しむどころではない苦行」が約30分、その間、江戸時代の拷問「石抱き」のことを考えていたそうだ。これに懲りた吉田さん、今年は毎日数分ずつの鍛錬で身体を正座に慣らす、なんて一念発起はないまま、ネット通販で「正座イス」を入手する。税込み2580円なり。

   どんなものなのか。正座した尻と両足の間に逆三角形の空間をつくることで、ひざ、すね、足の甲にかかる体重を減らす器具である。携帯しやすいよう、ふだんは折りたたまれている。中が空洞の三角柱に組み立て、平面が尻に当たるように、とがった方を床につける。上下が逆だと、それこそ怪しげな責め具になるので注意が必要である。

  • 茶席で長時間の正座、慣れていないと…
    茶席で長時間の正座、慣れていないと…
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ズルではなく対策

   今年も参加費500円の茶会に顔を出した吉田さんは、鞄から例のものを取り出し、素早く尻の下に押し入れた。やや座高が高くなったのは、間違えて「大」を買ったためだ。

「ズルをしているような気持ちにもなったが、いや、これはズルではなく『対策』である、と胸を張り、和菓子と抹茶をいただいた」

   前年は茶道具や掛け軸、花入れなどを楽しむ余裕はなかったが、今回は少なくとも肉体的な余裕はある。ただ、そういう方面にはもともと興味が薄い吉田さんは、床の間にガンプラ(機動戦士ガンダム関連のプラモデル)とかが飾ってあったら面白いのに、などと異なことを想像してしまう。

   「正座の痛みがなければないで、茶席にふさわしくないことしか考えない人間、ということだろうか」と、自虐のオチでまとめた。

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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