お金に翻弄される、そんな時代は終わりを告げる

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経済を考える上で重要なのは自然界

   佐藤さんは、「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」と経済をとらえる。明快である。

   2018年の世界は、貨幣経済と自由市場経済を採用している。いまからどう変化するのだろうか?佐藤さんには、様々な経済が見えている。企業、商店街、大学のサークル、Facebook。これらも経済を構成する経済なのだ。フラクタル。マトリョーシカのように重構造として経済を理解するのである。

   製品やサービスをお金で取引するのも経済ならば、利用者という母集団に対してあるサービスを提示し、利用者がよろこんでつかうことによってサービスが拡大するなら、その仕組みも経済なのである。求められるのはマーケティングとコミュニティー形成。

   Blogger、Youtuberをはじめ、ネット空間で影響力のある個人は、人々の脳内の快楽を司る「報酬系」という神経回路に訴求しているという。佐藤さんは、経済の仕組みをうまく作るには、脳みその仕組みに忠実になることが近道と説く。その一例が友達や世間に認められる「承認欲求」。SNSの登場によって日常的に承認欲求が満たされるのである。

   もう一つ、経済を考える上で重要なのは自然界というメカニズム。個体と種と環境とが、常に最適になるように調整がされる自然界は、法律や政治よりも優れている。だとすれば、自然界に内在する力を模倣することが、経済が発展する鍵ではないか。(1)自己組織化する力があること、(2)エネルギーを循環する力があること、(3)情報を活用して秩序を維持・強化すること、の三つの特徴が自然界にはある。物理学の分野ではプリコジンが散逸構造と呼び、経済学の分野ではハイエクが自生的秩序と呼んだものだそうだ。このお二人はノーベル賞受賞者。

   組織ではたらく者にとっては、組織もひとつの経済。自分達の組織を維持・強化するためには、情報を活用する、すなわち、企業の理念や将来の目標を言葉で共有することが重要になってくるのではないか。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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