「かわいそうなのはあたし」だった
「東京」が収録されている2月21日発売の新作アルバム「I」は、2年2か月ぶりのオリジナル。「I」は「愛」であり「自分」と言う意味だ。「一人」という読み方も出来るかもしれない。「東京」という世界で最も輝いていると言って過言ではない街に暮らす女性の心の内。光が強ければ闇も深い。華やかさと裏腹な心の空白。誰もが秘密を抱えながら本当のことを口に出さずに生きている。何度抱きしめられても確かめきれない不安やもどかしさと戦っている大人の女性の愛の物語は「愛の語り部」を自称している彼女の真骨頂だろう。
作家陣にはこれまでの彼女の音楽を支えてきた作家のほかに小田和正や平井堅なども加わっている。中でも平井堅が書いた「かわいそうだよね」は、アルバムを象徴する曲になっている。
つまり、「選ばれた女」であるために「平凡」であることを馬鹿にし、そういう子を「かわいそう」と笑っていた自分が今、同じような境遇にいる。自分に出来ることなど何もなかったと述懐し「かわいそうなのはあたし」だったと歌っている。作者の平井堅は「美しい、切ないJUJUナンバーは既に沢山あるので、今までの彼女に無い、泥臭い、心の嗚咽の様な曲を目指したつもりです」というコメントを出している。
「酔い覚め感」とでも言えば良いだろうか。はしゃぎ過ぎた夜が明けた時のようなとりとめのない重さ。青春とは呼べない年齢を自覚した時の途方に暮れるような寂寥感。どの曲からも、そんな「都会の女性の愛と孤独」が見えてくる。迷いながら裏切られながら、最後に泣いたのがいつかも思い出せない。大丈夫と自分に言い聞かせながら、それでも共に歩ける「あなた」とのめぐり逢いを求めてゆく。
そんな物語に「東京」も「マンハッタン」も変わりはないのかもしれない。
(タケ)