温存していた切り札
「なんだ、証明したかったのは自分の潔白か」...大センセイと読者を裏切るオチ。同時に「あんたら私にも言わせてよ」という女性の必死さが伝わってくる。
人間観察や人物描写はエッセイの基本技のひとつ。「キレる中高年男性」はもはや定番ネタである。それだけ目撃例が多いわけで、私も図書館や役所のカウンターで見かけるし、しばしば自らキレかける。老人密度の濃い優先席とその周辺は、いわば火薬庫といえる。
加齢とともに怒りっぽくなるのは、体の動きや頭の回りが思うようにならない、つまり若い頃にできたことができない喪失感が一因らしい。高齢化社会の病理には違いない。
もちろん山田コラムのケースでは、包帯という切り札を足元に忍ばせたまま睡魔に身をゆだね、ぐにゃぐにゃになった女性にも多少の非はあると思う。
コラムのタイトルは「スカートの中」。末筆ながら、それにつられて読み始めたことを書き添えておく。