優先席は火薬庫だ 山田清機さんの感動を覆した白い切り札

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温存していた切り札

   「なんだ、証明したかったのは自分の潔白か」...大センセイと読者を裏切るオチ。同時に「あんたら私にも言わせてよ」という女性の必死さが伝わってくる。

   人間観察や人物描写はエッセイの基本技のひとつ。「キレる中高年男性」はもはや定番ネタである。それだけ目撃例が多いわけで、私も図書館や役所のカウンターで見かけるし、しばしば自らキレかける。老人密度の濃い優先席とその周辺は、いわば火薬庫といえる。

   加齢とともに怒りっぽくなるのは、体の動きや頭の回りが思うようにならない、つまり若い頃にできたことができない喪失感が一因らしい。高齢化社会の病理には違いない。

   もちろん山田コラムのケースでは、包帯という切り札を足元に忍ばせたまま睡魔に身をゆだね、ぐにゃぐにゃになった女性にも多少の非はあると思う。

   コラムのタイトルは「スカートの中」。末筆ながら、それにつられて読み始めたことを書き添えておく。

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。
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