戦後地域が再び栄えますようにとの想いを込めた
一方、AERA記事には、沖縄の出版社の草分け的存在の「ボーダーインク」の編集者である新城和博氏(1963年生)も登場し、「例えば、戦後の復興の象徴である農連市場が壊されて新しい建物になっても、それをぼくたちが普段の生活の中で使いこなしてシマー(沖縄)化していくことができるんだと思う」という。そのボーダーインクから、「本日の栄町市場と、旅する小書店」(宮里綾羽著)が昨年11月に刊行された。本書の帯には、「那覇『宮里小書店』の副支店長が綴ったカウンター越しのエッセイ」、「二度見してしまう風景、うたた寝する市場、何度も読み返す本。世界はこんなにも愛おしい」とある。
栄町市場は、戦後の復興期に誕生した市場で、戦前は「ひめゆり学徒隊」の母校である沖縄県立第一高等女子学校と沖縄県師範学校女子部があったが、空爆で瓦礫となり、戦後地域が再び栄えますようにとの想いを込めたものだそうだ。壁のないお隣の店が、ベビー服と肌着を主に扱う金城さんのお店で、ともに店番をしながらゆったり流れる時間の素晴らしさが文字からも浮かび上がってくる。栄町市場で、なりわいをし、日々を暮らす人々の様子が生き生きと描かれる。仲村氏が、その脳裏に浮かべ希求する、「消えゆく」沖縄の風景、とは本来こういうものなのだろう。それは、依然として、新城氏がいうように沖縄の庶民の、普段の生活の中に生きているではないか。そこに大いなる希望もある。
経済官庁 AK