1870年に初演、音楽は今もよく耳にするほどに
流行は移ろいやすいものです。19世紀前半を席巻したフランス発の「ロマンチック・バレエ」も、1860年ごろには飽きられていました。そこで、パリオペラ座では、新進の作曲家、レオ・ドリーブに委嘱して、音楽にも力を入れた新作バレエを登場させることになります。
物語は、ロマン派の音楽に大きな影響を与えた、ドイツの作家E.T.A.ホフマンの怪奇小説ともいうべき「砂男」に決まりました。原作は怪奇小説といってもよいロマン派時代のおどろおどろしい物語でしたが、主役の人形コッペリアを中心に巻き起こるドタバタ騒動の喜劇に脚本を書き換え、そこにワルツや、マズルカといった、ショパンなどの影響で、パリの人々にロマン派時代に親しまれるようになった「少し異国風の踊り」をちりばめて、バレエは完成するのです。
ドリーブは期待に応えて、素晴らしい音楽を書き上げました。絶対に失敗が許されない初演のために、準備期間を異例の3年もかけたため、主役のバレリーナの交代などが起こってしまいましたが、急遽抜擢された主役も見事に役を務め、1870年、皇帝ナポレオン3世臨席のもと行われた初演は大成功となります。
しかし、このバレエの成功は、「フレンチ・バレエ最後の輝き」となってしまいました。普仏戦争がはじまり、フランス自体が芸術どころではなくなってしまったのです。これ以後、新作バレエの中心は、フランスの伝統をひいたロシアに移ることになります。
しかし、コッペリアは、なにより音楽が素晴らしかったために、現在でもバレエとは、別に音楽だけでよく耳にします。一度はどこかで、聞いたことがある・・それぐらい日常に溶け込んでいるのが、「コッペリア」の音楽たちです。そしてもちろん、バレエ自体も、ロマンチック・バレエの重要なレパートリーとして、今でも頻繁に上演されるのです。
本田聖嗣