日本各地では連日記録的な寒さが続いているが、冬季五輪開幕直前の韓国・平昌も氷点下10度以下まで気温が下がり、風の強さもあってまさに極寒の地だ。
厳しい天候だが、五輪というアスリートにとって最高の舞台で、自分の能力を最大限に発揮したい選手たちにとって、体調悪化は何としても避けたい。しかし厳冬の平昌ではインフルエンザ、そしてノロウイルスと厄介な感染症の懸念が強まっている。
北朝鮮で大流行、ウイルスが韓国に持ち込まれる恐れ
世界保健機関(WHO)は2018年1月26日、北朝鮮でのインフルエンザ大流行を報告した。17年12月1日~18年1月16日の期間で12万6574人が感染の疑いありとされ、うち8万1640人がH1N1型ウイルスの陽性反応を示した。1月17日~23日の週でも、2万8375人が新たに陽性と診断された。北朝鮮も今冬は大寒波に見舞われており、例年以上の寒さが感染拡大に影響しているとWHOでは見ている。
平昌冬季五輪では、韓国と北朝鮮の間で「南北宥和」がうたわれ、北朝鮮から選手団や応援団が参加する。ところが、これにより「感染の拡大を食い止めるのは難しいかもしれないと専門家は危惧する」と、米CNN(日本語電子版)は2月1日付記事で報じた。これまで人的交流がほとんどなかった南北間で、「雪解けムード」がもしもインフル拡大につながったとしたら、皮肉だ。
韓国内では鳥インフルエンザも心配の種といえる。外務省は2月1日、五輪・パラリンピック観戦で渡韓する観光客に向けて、ウェブサイトで注意喚起している。そのひとつが鳥インフル対策だ。これまで韓国内での人体への感染は報告されていないが、「養鶏場や渡り鳥の飛来地への訪問は控え,死んだ鳥に触ったりしないようにするとともに,手洗い・うがいの励行,必要に応じてマスクを着用する」よう呼びかけている。
「選手村の警備員ら31人が隔離」と韓国有力紙
韓国の有力紙、中央日報(日本語電子版)は2月5日、「平昌、ノロウイルスで『非常事態』」という気になる記事を配信した。平昌五輪組織委員会の発表として、青少年研修センター(集団給食所)で、選手村の警備員ら31人がノロウイルスとみられる症状を示したため、隔離措置がとられたと報じたのだ。
選手村はスキー競技が行われる平昌と、氷上競技が開催される江陵の2か所で、2月1日に開村した。日本の選手団も4日から続々と入村を始めている。
厚生労働省によると、ノロウイルスはほとんどが経口感染で、患者のウイルスが大量に含まれるふん便や吐しゃ物から人の手を介して、あるいは共同生活施設など人同士の接触機会が多い場所での飛沫感染でうつるケースが考えられる。感染性胃腸炎で、おう吐や下痢、腹痛と言った症状が現れる。多くは軽症で済む。
だが中央日報によると、「ノロウイルスの診断を受けた警備員のうち、一部は選手村の保安を担当していた」という。五輪組織委を中心に対策を進めており、今のところ被害は報告されていない。だが選手が万一大会中に発症したら、悔やんでも悔やみきれない五輪となってしまう。
2014年のリオデジャネイロ五輪では、蚊が媒介するジカ熱が開幕前から流行して感染が懸念された。幸い選手への影響はなかったが、近年の五輪はこうした感染症対策に一層力を注がねばならなくなってきた。