音楽教室からの徴収方針や外国映画音楽の上映権使用料の値上げなど、日本音楽著作権協会(JASRAC)の姿勢には批判が少なくない。
JASRAC理事長の浅石道夫氏は2018年1月31日、同協会主催のシンポジウムで講演した。今後の方針を示すなかで、「最後はJASRACが(音楽)出版の管理を辞める」との驚きの発言が飛び出した。
日本には引用判断の判断基準がない
2017年に大きな注目を集めた「京大式辞事件」。米歌手ボブ・ディランさんの歌詞の一節を引いた式辞を、京都大学がウェブサイトに掲載したところ、これは引用に当たるのか、それとも著作権料が発生するかをめぐり議論となった。
第一報を伝えた京都新聞は「JASRACが使用料を請求した」と伝えていたが、JASRACによると京大に問い合わせただけで、最終的に「引用の範囲」と判断していた。
引用には、どんな判断基準があるのか。浅石氏は、出所の明示や改変の禁止など7要件をうたった「『出版契約ハンドブック』(日本書籍出版協会)と考え方はほぼ一致」と述べた。しかし、この基準も完ぺきではないようだ。
「主従関係と必然性、必要最低限の引用量。ここでよく(JASRACが管理する権利の利用者と)ぶつかる」。
浅石氏によると、米国では「詩の引用は250語まで」「音楽作品は全体の10%もしくは30秒まで」と具体的に数字で示した基準があるが、日本ではそれがない。
しかも、JASRACでは引用に関して一切法的措置をとっていないという。いったいなぜか。浅石氏はこう続けた。
「仮に看過できない引用があったとしても、500万部以上の(音楽)出版物の使用料は5万8000円に消費税。JASRACの管理手数料は20%なのでおよそ1万2000円。1万2000円で法的措置をとるかというのが現実問題にある。この額では、弁護士への着手金や報酬にもならず(受けてもらえない)」
「団体が管理している場合は使用料規定に限度があるが、諸外国は個人が管理しているので100万円とか1000万円とか平気で言える。その中で判例を作っていく」