引退したいロッシーニによる「抵抗の証」? オペラ「ウィリアム・テル」誕生秘話

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

ロッシーニ、引退したがった理由

   しかし、その実態は、過酷なものでした。ヒットメーカーというのは、アーティスト単独でできるものではなく、そこに必ず名プロデューサーがいます。オペラの母国、イタリアでは、各歌劇場とプロデューサーと作曲家の連携が緊密であったために、つぎつぎとヒット作品が生まれ、人気の作曲家も生み出すことになります。その流れに乗って、ロッシーニも次から次へとヒット作を連発し・・・時には、忙しすぎて序曲を作る暇もなく、自分の他のオペラの序曲を転用したらそれがまたヒット作となった「セビリアの理髪師」(参考:速筆ロッシーニの確信犯的「再」転用は代表作に オペラ「セビリアの理髪師」序曲)のような作品もありました。

   そんな忙しい生活のさなか、ロッシーニは引退を決意します。ヒットメーカーとしてお金は十分に稼いだので、生活には困りません。ただ、人気が落ちていないので、このままイタリアにいるとオペラ作曲家としてずっと自転車操業をしなければならない・・・一般的に「引退」は、自分の才能の枯渇や、体力の限界を感じてするものですが、ロッシーニは正反対、実に贅沢なことに、絶頂期に引退することにしたのです。なぜなら、彼は音楽と同じぐらい大事にしている「美食」という趣味があり、そちらを極めてみたいという欲もあり、とにかく時間が欲しかったのでしょう。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

姉妹サイト