マラソンがなければ、今の自分はなかっただろう

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これからも走り続ける――「美しさ」を追求する――

   走ることが生活の一部になっている著者にとって、これからも走り続けることは当然として、今後、何をテーマとするのか。

   著者は、「美しく走る」だという。

「ただ暮らしにランニングを取り入れるだけなら、7キロを45分で週3回で十分なのです。けれども僕は、もっと上の世界を生み出したい、そこを体験して自分を発見したいと思いました。そこで、それ以降は、自分のマラソンのテーマを『美しく走る』にすることにしました」

   著者にとって、美しさとは普遍的なテーマであり、人生のすべてに通じるものだというのだ。

「美しさは、偶然出会った何かがきっかけになって手に入るというほど、簡単なものではありません。ましてや、どこかで落ちているものを拾ってきたりするようなものでもありません」
「速く走るよりも、1キロに5分45秒をかけて、ていねいにすべてに神経を行きわたらせて遅く走るというのが、ことのほか大変なのです」
「走っているとき、バタバタとやってくる人もいれば、スッスッスッとやってくる人もいるし、ペタペタとやってくる人もいる。一番いいのは、音がしない走り方です。また、美しく走るには呼吸が乱れないほうがいいのです」

   ランニングと「美」を結び付けて考えたことがない評者にとっては、意外な指摘だったが、ランニングの高みを目指すとはこういうことかという気がした。常に自分を変えるためにチャレンジを続けることで、新しい発見があるというのだ。

「走ることはただの運動ではないのです。走ることに向けてのさまざまな営みをとおして、生き方についての大切なことがたくさんみつかりますし、漠然としていたものがはっきり見えてきます」

   来月は「東京マラソン」が開催される。評者は第1回大会から抽選に落ち続けてきたが、今回ついに、応募すること12回目にして初めて当選。初挑戦の機会を迎えることになる。タイムは全く期待できないが、自分なりのペースを守って、最後まで走り続け、新しい何かを発見したいと思っている。

JOJO(厚生労働省)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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