ヴィヴァルディの「冬」が教えてくれる ヴェネツィアの厳しい冬

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足元は洪水、上空からは小雨

   第1楽章の冒頭から、激しい独奏ヴァイオリンと、弦楽合奏が、争うように早いパッセージを弾き、ヴィヴァルディ独特のハーモニーの心地よい進行に乗せられていると、私は、足元は洪水、そして、上空からは小雨が降っている霧の立ち込めた冬のヴェネツィアの広場を、速足で駆け抜けているようなイメージを想像してしまいます。

   最近では、徐々に人気が出てきているようで、フィギュアスケートの音楽や、CMの楽曲として、「冬」が単独で聞かれることも多くなったように感じます。

   現代では「四季」のおかげでバロックの巨匠のひとりとされるヴィヴァルディですが、彼は、仕事を求めたウィーンで不遇のうちに亡くなったということもあって、死後しばらくは忘れられた作曲家でした。

   しかし、多くのすぐれたヴァイオリン協奏曲などを残し、それを遠く離れたドイツのJ.S.バッハが、イタリアの協奏曲形式の勉強のために、編曲をしたり、自作の中に取り入れたりしていたため、バッハがドイツで再評価されるようになると、自動的にそのバッハがリスペクトしていたと思われる、ヴィヴァルディの作品にも陽が当たり始め、再評価されて、今日の高評価につながってゆくのです。

   厳しいヴェネツィアの冬は過ぎて、また麗しの春がやってくるはずです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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