「四季」とは表記せず
そのヴェネツィア共和国がまだ存在した1678年に、アントニオ・ヴィヴァルディは生まれました。司祭であり、ヴァイオリニストであり、音楽院の教師であり、作曲家であったヴィヴァルディは、生誕の地ヴェネツィアで、若いころから活躍します。
ヴァイオリンが得意だったため、イタリア・バロックに多く見られる「ヴァイオリン協奏曲」形式の曲をいくつか残したヴィヴァルディでしたが、円熟期の40代半ばに作曲した「和声と創意への試み Op.8」の全12曲は特に傑作とされています。そのうち、第1番から第4番までが順に「春」「夏」「秋」「冬」と名付けられ、この4曲だけで演奏されることが現代では多くなっていますが、ヴィヴァルディ自身は、この4曲をまとめて「四季」と表記していません。従って、今日取り上げた「冬」は、あくまでヴァイオリン協奏曲「和声と創意への試み 第4番『冬』 RV297」(注 リュオム番号:ヴィヴァルディ作品だけの作品番号)とすべきなのです。
四季、というタイトルが独り歩きしたために、第1番の春の、それも第1楽章の部分だけが突出して有名になり、ヴィヴァルディの代名詞ともなっていますが、私は、特にこの「冬」に魅力を感じます。