先週に引き続き、今週も冬の寒さが北半球を覆っています。日本列島は、例年より寒気の襲来が多く、長期化しているかな・・程度ですが、諸外国ではナイアガラの滝が凍ったり、サハラ砂漠に雪が降ったりと、「尋常じゃない寒さ」が観測されるところも多く、今年の冬の寒さが特別なことが感じられます。地球温暖化というより、気候変動・・ひょっとしたら、地球は寒くなっているのかもしれません。
先週は、寒さに関連してヨーロッパの寒い国、ロシアのスクリャービンの作品をとりあげましたが、今週は、ヨーロッパでは南の国、イタリアの作曲家が登場です。イタリア・バロックを代表する巨匠、アントニオ・ヴィヴァルディの代表作、「四季」の中から「冬」を取り上げます。
家の中も水浸し
クラシック音楽の発祥の地でもあるイタリア半島は、ヨーロッパでは南の国に入りますが、日本と比べれば、はるかに緯度が高く、冬季は夜が長く、日照時間が短くなります。そして、天気も悪くなります。
水の都、として現代でも人気の観光地、ヴェネツィアは、冬季期間中は憂鬱な時期となります。日照時間が少なく、寒くて、天気が悪いだけならばヨーロッパ各都市共通ですが、冬季は、海の水位が上昇して、ヴェネツィアは町中が浸水することが多く、有名なサン・マルコ広場をはじめとして、夏季には道路となっているところや家の中も水浸しになり、水の都ならぬ「水の中の都」と化してしまうのです。
もちろん居住者は毎年のことですから、長靴を履いたり、または浸水した広場に歩行者用の板を渡したりしてしのぎますが、観光客にとっては、バッドシーズン、冬季に訪れる人はぐっと少なくなります。
もっともヴェネツィア通の人は、あえて、その「空いている」冬の時期に訪れる人もいるようですが。
現代では観光が主要産業のヴェネツィアですが、まだイタリアという統一国家ができる前、ヴェネツィアは、海の上にあって外敵から身を守りやすいことと引き換えに、農地がほとんどなく、貿易で生きていくしかありませんでした。
通商国家であることがヴェネツィアの力の源泉だったのです。しかし、冬はそれも阻みました。地中海と、そこへつながるアドリア海、いずれもが冬季は荒れる海となり、さらに風も帆船の航行には適さなかったのです。貿易ができない季節、冬は、ヴェネツィア共和国にとって、いろいろな意味で憂鬱な季節なのでした。