遺訓集をまとめたのは庄内藩の人たちだった
「敬天愛人」という言葉が額縁に入れて飾られていることを見たことがあるだろう。「天を敬い、人を愛する」。西郷隆盛の遺訓の代表のひとつだ。
『新版 南洲翁遺訓』(翻訳・解説:猪飼隆明、KADOKAWA、691円)は、そんな西郷の遺訓集、41条と追加2条すべてを原文、現代語訳、くわしい解説で紹介している。人として踏むべき道や、為政者のあるべき姿、人材登用、外交、財政など心構えを説く。
これを本にまとめたのは郷土の薩摩ではなく、戊辰戦争で鎮圧された庄内藩(現・山形県)の人たちだ。厳罰な処分を覚悟していたが、西郷の寛大な処分にいたく感銘し、鹿児島を訪れて教えを受け、後世に伝えようと刊行したものだ。酒田市には遺徳をたたえる南洲神社があり、隣の鶴岡市は西郷との縁で鹿児島市と兄弟都市を結んでいる。