タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」
この10年、日本の音楽産業は、アイドルグループに支えられてきたと言って過言ではない。その中核にいたのがAKB48であることは説明不要だろう。2005年結成、2009年に14枚目のシングル「RIVER」で初の一位を記録。以降、去年の50枚目のシングル「11月のアンクレット」まで連続37枚が一位、連続31枚がミリオンセラーという気が遠くなるような実績がそれを証明している。右肩下がりでCDが売れなくなっている中でミリオンセラーを出し続けることがどのくらい奇跡的なことか。握手券目当てで音楽不在というような表面的な批判だけで彼女たちは語れない。
飽きられる、という結末がない
AKB48がアイドルシーンの革命だったことがいくつもある。
一つは"会いに行けるアイドル"というコンセプトだろう。それまでのアイドルは"会いに行けない"存在だった。どこにでもいる女の子がある日、テレビの画面の中で輝くような笑顔を見せているというシンデレラストーリーは、スターが手の届かない遠い雲の上の人だからこそ成り立った。
彼女たちは、それを変えた。根本から変えてしまった。秋葉原のAKB劇場は、雑居ビルの中にある。2010年にアイドル好きなラジオディレクターに誘われて足を踏み入れた時、あまりに狭い空間に気圧されてしまった。
手を伸ばせば届きそうな至近距離のステージで明日を夢見る女の子たちが必死に汗を流している。目を輝かせて見つめる観客はそれぞれの想いを託して贔屓の子を見つけて一番近しい応援団になる。その猥雑とも言える熱度のエネルギーはすさまじいものがあった。これはとんでもないことが起きそうだという身震いするような予感をはるかに凌ぐ現実がその後に待っていた。
従来の芸能界のスターシステムとは無縁な発想。その最たるものが"総選挙"と"ジャンケン選抜"だろう。
誰がメインで歌うか、ヒロインになるか。古今東西、ショービジネスを題材にした映画や小説が取り扱ってきた光と影の人間ドラマをファンの手に委ねてしまった。メインを決める、スターを作るのはファンの投票であり、全て偶然性が支配するジャンケンによるというアイデアが導入されたことで、一切がガラス張りになった。彼女たちの人気が一過性に終わらないのは、"飽きられる"という結末がないせいでもあるだろう。つまり、ファンは、彼女たちをどうにでも作り変えられる立場にあるからだ。"お客様は神様です"というかつての三波春夫の名文句の意味を誰よりも実感しているのがAKB48のメンバーではないだろうか。