オネゲルの最後の作品「クリスマス・カンタータ」20世紀の苦悩も内包した名曲

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ドイツとフランス、もう2度と対立せず融和してほしい

   バリトンソロ、子供の合唱、混声合唱、それをオルガンと管弦楽が伴奏する「クリスマス・カンタータ」は、歌詞にラテン語、ドイツ語、フランス語、が採用されています。

   混沌としたくらい導入部のあと、中間部では、3つの言語でそれぞれ有名なクリスマス・キャロルが出現し、そこに天使の声ともとれる児童の合唱が合流して、壮大で感動的なクライマックスへ向かいます。近代の作曲家ですから、現代音楽的な難しさを感じる部分もあるのですが、それだけに一層、なじみある「クリスマスの旋律」が聴こえた時には、神々しささえ感じさせます。

   そこには、クリスマスを祝うという本来の意味と、未曽有の第二次大戦のあと、ドイツとフランスという大国が、もう二度と対立などせず、融和してほしい、という隣国スイス人オネゲルのメッセージも、込められているような気がします。

   オネゲルは、1955年に亡くなりました。この曲の初演のわずか2年後です。事実上のオネゲルの遺言となった「クリスマス・カンタータ」は、21世紀になっても聖地エルサレムなどでの混乱を起こしている我々人類に、いまでも重要なメッセージを投げかけているのかもしれません。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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