ドイツとフランス、もう2度と対立せず融和してほしい
バリトンソロ、子供の合唱、混声合唱、それをオルガンと管弦楽が伴奏する「クリスマス・カンタータ」は、歌詞にラテン語、ドイツ語、フランス語、が採用されています。
混沌としたくらい導入部のあと、中間部では、3つの言語でそれぞれ有名なクリスマス・キャロルが出現し、そこに天使の声ともとれる児童の合唱が合流して、壮大で感動的なクライマックスへ向かいます。近代の作曲家ですから、現代音楽的な難しさを感じる部分もあるのですが、それだけに一層、なじみある「クリスマスの旋律」が聴こえた時には、神々しささえ感じさせます。
そこには、クリスマスを祝うという本来の意味と、未曽有の第二次大戦のあと、ドイツとフランスという大国が、もう二度と対立などせず、融和してほしい、という隣国スイス人オネゲルのメッセージも、込められているような気がします。
オネゲルは、1955年に亡くなりました。この曲の初演のわずか2年後です。事実上のオネゲルの遺言となった「クリスマス・カンタータ」は、21世紀になっても聖地エルサレムなどでの混乱を起こしている我々人類に、いまでも重要なメッセージを投げかけているのかもしれません。
本田聖嗣