最大の難関は「詩」だった
CHAGE&ASKAを最初に取材したのは1983年に代々木オリンピック競技場(当時)を初めてコンサートに使ったライブの時だ。それ以来、彼の創作活動で最大の難関が詩だということを何度となく見せられてきた。詩が書けないということで取材が前日にキャンセルになったこともある。でも、今年の2枚のアルバムについて彼はこう言ったのだ。
「今回、4時間かかった詩はないんです。前は一週間、一か月かかっても書けないことがしょっちゅうでした。こだわりが変わってきたみたいですね。前は一行目までが長かった。今は、大枠を書いてから書き直す。何でそうなったかは自分でも分析できないんですけど、時間はかかりませんでした。表に出られない、皆さんにとっては空白の時間に楽曲作りと並行して散文詩も書いてたんですが、それが140編くらいありますからね」
今年の彼の活動は、そうした創作だけに留まらない。二枚のアルバムは、自分のレーベルDADAから発売されている。大手のレコード会社を通さないインディーズという形だし、11月には配信レーベルWeareも立ち上げた。
「音楽を作ることがどんどん難しくなってますからね。僕らみたいに恵まれた活動をさせてもらっているミュージシャンはいいんです。もっと世に出てゆくべき才能が見つけてもらえない。スタジオで音楽を作るという経験をさせてあげたい。だから、今も大きなアーティストには声をかけてません。自分たちでやれる人はいいんです。僕らはミュージシャンがミュージシャンとして活動できる場を作りたい。ビジネスではありません。僕は、広場、共同体と呼んでます」
彼のソロアルバムは2012年の「SCRAMBLE」以来丸5年ぶり。その間に起きたことに触れることにはさほど意味はないように思う。「罪を憎んで人を憎まず」という言葉に倣えば「罪を憎んで作品を憎まず」だろう。音楽には何の非もない。何よりも大切なのは、つまずきや過ちからどう歩き出すかだからだ。
「僕がこういうことを言うとお叱りを受けるかもしれませんが、あの事件がなかったらこんな風には活動出来てなかったと思うんです。相変わらずメジャー契約の中で過去の流れの中でぬくぬくとやっていたでしょう。今、僕は自由です。どことも契約がない。全て自分の責任。世の中に喜んでもらえること、聞いている人の幸せを共有して打ちひしがれた人の支えや灯りになる音楽。それを創れていることの喜び。共鳴してくれる人への感謝の気持ちを持って真摯にやってゆきたいと思ってます」
CHAGE&ASKAのデビューは79年。来年はデビュー39周年。そして、彼も社会的にも晴れて自由になる。
今、3年後のことを計画しているのだそうだ。
(タケ)