一つの答えではなく、多様な答えがあることを知る
単純な記憶力や情報処理速度といった能力は若い人にはかなわない。けれど、年齢によってほとんど変動のない、あるいは年齢とともに上昇する知性があるという(認知的成熟度)。簡単にいえば、白と黒の間にグレーをいくつ認められるかという能力、言い換えれば、一つの問に対して、答えを一つに決めつけず、いくつかの答えを考えつくことができる力だそうだ。
しかし、困ったことに、50歳を過ぎると、この認知的成熟度が退行しがちだという。次第に、白黒をはっきりさせないと気が済まなくなってくる(決めつけ思考)、自分の経験則から離れられなくなるのだそうだ。前頭葉の老化に伴って生じる思考の老化だという。
社会人生活が30年を超えた評者自身を振り返っても、つい、あの時はこうだったという昔の経験から、安易に現在の対処を考えようとしてしまうことがある。
著者は、こうした「決めつけ」から脱却するために、「自分の意見とは異なる意見に耳を傾ける」ことを強調する。異なる意見の人と積極的に会ったり、あえて自分とは反対の意見を述べたりしている人の本を読むべきというのだ。
「自分は右寄りだと思う人は、『世界』を読む。左寄りだと思っている人は『正論』を読む。いずれの人も、読むうちに腹が立ってくるだろうが、少なくとも、発想の幅は広がるはずだ」
「かくあるべし思考」を改め、「別の道もある」、「道はいくつもある」を理解する。そのために、50代にも勉強が必要だ。
著者曰く、「大人の勉強法というのは、ひとつの真理や真相を追究して、ひとつの答えにたどりつくことでなく、いろいろな説があること、いろいろな可能性があることを知るためにするものだ」
50代からの勉強とは、答えを得るためではなく、多様な答えがあることを知るためのものなのだ。
問題は、日々、実践できるかどうかである。
JOJO(厚生労働省)