医学博士であり噺家、立川らく朝が創作の「健康落語」 笑って納得!聴く人をとりこに

提供:沢井製薬

メタボになったかぐや姫

――健康情報を入れ過ぎないといえば、師匠はご著書「ドクターらく朝の健康噺」(春陽堂書店)で、落語はあくまでも「フィクション」、だからこそ伝わるものがある、とお書きになっていらっしゃいました。

かなり突飛なキャラクターなどを入れていますからね。きょうの公演で披露した「幽霊将棋」では、幽霊が登場しました。他には、かぐや姫が月に戻るも、重力がないものだから、すっかり太ってメタボになってしまい、重力のある地球にダイエットに戻ってくる、とかもね。突飛なキャラクターで状況を極端にすることで、いろいろとアピールしやすくなります。
らく朝師匠の高座に聞き入る参加者の皆さん
らく朝師匠の高座に聞き入る参加者の皆さん

――糖尿病をテーマとする「内緒のパーティー」では、糖尿病の入院患者たちが主治医に内緒でパーティーを開きましたね。あれも現実世界では怒られますが、落語の世界「落語国」だと成立するのですよね。

糖尿病の話をする際、カロリーを守りましょうと言ったって、誰も聞かないわけです。面白くないじゃないですか。杓子定規なことを入れたって、落語にならないですよ。そこを少し斜めから入る。「内緒のパーティー」では後ろから、裏口から入っているようなものでね。言ってみれば「不健康落語」なのです。逆説的に物事を捉え、そこから何らかのメッセージを発信しよう、というやり方です。「不健康落語」的に創作することが、最近、増えてしまっていますね(笑)。

――師匠のお話から「不健康落語」の五文字が出てくるとは、驚きました!

というのも真面目な話になりますが、落語と健康の話って本来、相容れないものなんです。水と油。なぜかというと、これは大師匠の立川談志が言った言葉ですが、落語とは「業の肯定」なんです。落語の登場人物は皆、自分の中にある欲望なり、ネガティブな面とか、そういうものをさらけ出しながら生きている。皆がそれを認め合っているわけです。若旦那なんていうのは皆、道楽息子だし、八つあん熊さんなんていうのは皆、飲兵衛だし。本来は抑えなきゃいけないものを抑えず、皆生きている。非常にストレスフリーな世界なので、落語ってすごく生き生きしているのですね。そんな世界で健康を語ろうとなると、これが一番難しい。クリアする方法の1つが、「内緒のパーティー」みたいな裏口から入ることなのです。
らく朝師匠の高座に聞き入る参加者の皆さん
らく朝師匠の高座に聞き入る参加者の皆さん
きょうの健忘症(編注:「幽霊将棋」のこと)だって、幽霊だから許せるだけで、普通の人が健忘症になると、身につまされちゃうでしょ。突飛なキャラクターを出す1つのメリットですよね。聞いている人が身につまされちゃったら、自分のことと受け止めてしまい、笑えなくなっちゃって本末転倒です。じゃあどうしよう、かぐや姫が太る分にはいいか、みたいなね(笑)。
■立川らく朝 1954年長野県生まれ。落語家で医学博士、笑いと健康学会理事。杏林大学医学部卒業後、慶応義塾大学医学部内科学教室へ入局。慶応健康相談センター(人間ドック)医長を勤める。2000年、46歳で立川志らく門下に入門、2015年10月真打昇進。
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