速書きの時こそ傑作ができる
「ランメルモールのルチア」は、ドニゼッティが脂の乗り切った38歳の時の作品。そのころ、イタリアでオペラの材料となり始めたスコットランドの作家、ウォルター・スコットの、実際の事件をもとにした小説を題材としています。親の決めた政略結婚と真実の恋人の間で悩む悲劇のヒロイン、ルチアが、結婚の祝宴の最中、政略結婚の相手を刺してしまい、取り乱し、真実の恋人も、その知らせを聞いて自らの命を絶つ、というシリアスな悲劇です。
主人公ルチアには、ソプラノのドラマチックな歌唱が要求され、特に有名な「狂乱の場」などでは、過去に、たくさんのプリマ・ドンナが人々を魅了してきました。話自体は暗い物語ですが、メロディーメーカー、ドニゼッティの実力がいかんなく発揮されたこのオペラは、19世紀イタリアオペラの代表作のひとつとなっています。
全3幕で、約2時間20分の上演時間がかかるこのオペラを、ドニゼッティとしては、「異例の長期間」である6週間(!)で書き上げた、と伝わっています。
速書きの時こそ傑作ができる、とうそぶいていたドニゼッティの代表作は、今でも世界中で上演され、人々を魅了しています。
本田聖嗣