史上最高のピアノ変奏曲
変奏曲、というのは通常与えられた主題のメロディーや、ハーモニーの進行状況を活かして数々の曲を作り上げてゆくものです。そのため、最後まで、メロディーの断片や、同じような和声進行が聴こえるのが通例ですが、ベートーヴェンは「ディアベリ変奏曲」において、究極の変奏曲を目指したため、テーマは細分化され、途中からもう原曲の面影はほとんど感じることはできません。
彼がディアベリのワルツ主題に対してリスペクトしていなかったことは明らかですが、だからこそ、そのテーマ曲を換骨奪胎して、ベートーヴェン・オリジナルの変奏曲の壮大な世界を作りだしたのです。
演奏に一時間近くかかるこの大作ですが、早速自分の会社から出版したディアベリをはじめ(ちなみに、のちに、ベートーヴェンの作品単独で第1巻、第2巻は50人の作曲家による50の変奏曲として出版し、当初の目的も達成しています)後世の作曲家・ピアニストによって絶賛され、現在では、「史上最高のピアノ変奏曲」といわれています。
本田聖嗣