たしかな「根」からどんな花が咲くのか
いくつもの異例、があった。
その最たるものが「公私の隔てのなさ」だった。
「座っているところを見たことがなかった」という母親を歌った「母へ」。ライブによく来てくれていたファンが若くしてなくなった時に見た空を見て書いたという「空の青」。歌が綴る彼女の人生。それを丁寧に説明しながら歌ってゆく。
驚かされたのは彼女の実姉が登場したことだった。前回のワンマンライブには身重のまま登場したという彼女は、その後に生まれたという赤ん坊を抱きながら子供と一緒に人参の着ぐるみを来て走り抜けたかと思えば一緒に踊ったりする。泣き出した赤ん坊を姉妹であやすというシーンもあった。
そんな場面が不自然にならない。ショッピングモールという場所がそうであるようにだ。それは、プロとアマチャアという次元にはないような気がした。
4月に出たメジャーデビューシングル「サクラ~卒業できなかった君へ」は、卒業できなかった人に向けた桜ソングである。サウンドプロデュースには売れっ子のベーシスト・亀田誠治が参加、メジャーデビュー後の環境の変化を予感させてくれる。でも、この日のライブは、これまで彼女が一緒にステージをやってきたというミュージシャンとスタッフ。まさに17年の「土の中」の結晶のようなライブだった。
これを「遅咲きの」と言ってしまって良いのだろうかとも思う。「苦節」という言葉が似合わないくらいに確かな「根」からどんな花が咲くか、来年以降の楽しみということになりそうだ。
(タケ)