半崎美子、17年「土の中」にいた
その結晶のようなステージ

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たしかな「根」からどんな花が咲くのか

   いくつもの異例、があった。

   その最たるものが「公私の隔てのなさ」だった。

   「座っているところを見たことがなかった」という母親を歌った「母へ」。ライブによく来てくれていたファンが若くしてなくなった時に見た空を見て書いたという「空の青」。歌が綴る彼女の人生。それを丁寧に説明しながら歌ってゆく。

   驚かされたのは彼女の実姉が登場したことだった。前回のワンマンライブには身重のまま登場したという彼女は、その後に生まれたという赤ん坊を抱きながら子供と一緒に人参の着ぐるみを来て走り抜けたかと思えば一緒に踊ったりする。泣き出した赤ん坊を姉妹であやすというシーンもあった。

   そんな場面が不自然にならない。ショッピングモールという場所がそうであるようにだ。それは、プロとアマチャアという次元にはないような気がした。

   4月に出たメジャーデビューシングル「サクラ~卒業できなかった君へ」は、卒業できなかった人に向けた桜ソングである。サウンドプロデュースには売れっ子のベーシスト・亀田誠治が参加、メジャーデビュー後の環境の変化を予感させてくれる。でも、この日のライブは、これまで彼女が一緒にステージをやってきたというミュージシャンとスタッフ。まさに17年の「土の中」の結晶のようなライブだった。

   これを「遅咲きの」と言ってしまって良いのだろうかとも思う。「苦節」という言葉が似合わないくらいに確かな「根」からどんな花が咲くか、来年以降の楽しみということになりそうだ。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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