早めの受診が大切
――今、機能性ディスペプシアの有病率は日本人でどれくらいなんでしょうか。
「健康診断を受けた方の有病率が10~20%くらい、胃の不調を感じて病院を受診した方の約半数とも言われています」
――続きまして、機能性ディスペプシアへの対策面をうかがいます。生活習慣で何か気をつけるべきことはありますか。
「食事、睡眠、運動の3大柱は強く関係しています。油ものの食事をとると、胃酸が増加します。香辛料やアルコール、タバコも影響します。運動して筋肉を動かすことで、自律神経が整えば、体の機能も整います。もし生活習慣で乱れがあると感じるなら、まずそこを整えてみるのが大事だと思います。最近、胃の不調を改善するとしてプロバイオティクスであるLG21乳酸菌のデータも発表され、取り入れてみるのも一つの方法だと思います。ただ、症状が長く続いている方は、生活習慣の改善にこだわらず、早めに消化器科を受診なさるのが大事だと思います」
――LG21乳酸菌の摂取もいいのですか。
「LG21乳酸菌が機能性ディスペプシアの症状を改善するという報告があります。機能性ディスペプシアの症状がある方が、LG21乳酸菌を摂ったところ、胃の症状が全体としてよくなり、症状を緩和したというデータが発表されています。また食品なので副作用もなく安心して取り入れられます」
――まずは病院に行くことが大切なんですね。
「すぐに命にかかわる病気ではないですが、生活の質を大きく低下する病気です。つらい胃もたれや痛みにより、友達と美味しくご飯が食べられない、外に出られなくて働きに行けず生活ができない、など大きな影響を与えることもあります。また精神的な疾患につながることも考えられるので、専門家の受診が大切です」
――受診した場合、どんな流れで診ていただけるのですか。
「器質的疾患がある時と同じ症状が出ますので、まず病気がないかを確認しなければなりません。問診し、診察し、血液検査や画像検査で肝臓や胆のう、すい臓にご病気がないかを評価する場合もあります。そして要となる内視鏡検査を行います。様々な検査で器質的疾患を除外しても、病気がないのにディスペプシア症状があるという方を、機能性ディスペプシアと診断します」
――先ほど、機能性ディスペプシアには胃もたれと早期飽満感、心窩部痛、心窩部の焼灼感などの症状があるとうかがいました。それぞれの薬物治療はどうなっていますか。
「機能性ディスペプシアは、色々な要因が絡み合って起こる病気です。症状に合わせた治療をするのが一番だと思います。代表的な薬は、早期飽満感やもたれ感の方に使われる薬、消化管運動機能改善薬(アコチアミド)です。胃の弛緩障害と排出障害を改善します。神経の伝達物質であるアセチルコリンの運動、働きを高める作用があるからです。心窩部痛や焼灼感に関しては、知覚過敏になっているので、酸の分泌を少しでも抑えてあげると、症状がやわらぎますから、酸分泌抑制剤を使用します」
――薬物治療で症状が改善する患者の割合はどれくらいですか。
「色んな因子が絡み合っていますので、薬物治療だけで完全に良くなるというのは、なかなか難しいです。大体、患者様の20%くらいと言われています。1剤だけでなく複数を組み合わせたり、取り替えたりして大体、4週間くらい様子を見るようにしています」