「社会的孤立」という新たなリスクへの対応――「共生支援」――
本書では、「家族」と「雇用システム」の変化から説き起こし、その行き着く先が「人口減少」であったと論じているが、同時に、「家族」と「雇用システム」の変化は、深刻な「社会的孤立」を招いたと指摘している。
そして、これまで、病気、老齢、介護、失業などといった個別のリスクに応じて制度化されてきた日本の社会保障は、こうした社会的孤立という新たなリスクに対応できていない、とする。
「これまでは、それぞれのリスクは別々に発生し、個々のリスクさえカバーすれば、人には帰る家庭があり、戻る職場があり、支える周囲の人々があり、そして、その『つながり』の中でふたたび力を取り戻し、社会や家庭で活動していくことができる、という暗黙の前提があった」
「しかし、周囲に心身の支えとなるような家族も同僚も友人も少なく、日常の生活が孤立している場合は、いくら支援サービスを提供しても、ひとりだけでは窮状を脱することが難しく、また、一旦改善してもふたたび同じような状態に戻ってしまうおそれが強い。さらに、複数のリスクを同時に抱える個人や家庭も多くなっている」
こうした認識に立って、今後は、個別リスクの保障だけでなく、人のつながりそのものを強めていくことが主要課題になると指摘する。「人々が自分以外の人と共に生きていく」ことそのものを支援するというのだ。
これを著者は、「共生支援」と呼び、次の3つの取組みを提唱している。
(1)孤立した人々をできる限り社会集団の中に「取り込む」(非正規労働者の正規化、社会保険への適用拡大など)
(2)包括的・伴走型の支援によって、孤立した人々を制度やサービス、さらには他の人と「つなぐ」
(3)就労支援や学習支援などによって、人々が自立していくことを支援し、生きる力を「強める」
著者が立案した「生活困窮者自立支援法」は、こうした視点に立って、事業が進められ、各地で実績を挙げているが、一昨年からは、さらに「我が事・丸ごと」といったキャッチフレーズで、次のステップに歩みを進めている。そして、この先には、「地域共生社会の実現」という目標がある。