理にかなった社会保障制度の改革がなされるかどうか
一方、「リベラル」な経済学者諸富徹氏(京都大学大学院経済研究科教授)の労作に「私たちはなぜ税金を納めるのか~租税の経済思想史」(新潮選書 2013年5月)がある。
この本のあとがきで、諸富氏は、税制改革の方向性について、所得税のフラット化や法人税率の引き下げを行う一方で、両税において課税ベースを広げ、金融所得に対して適正な課税を行う。そして、消費税で社会保障支出を賄えば、社会保障支出が持つ所得再分配効果を下支えすることができる、という。このように、日本であるべき税制改革についての広範な合意は、「リベラル」も含め、理性的には既に存在している。
そうなると、その社会保障支出(受益)が、きちんと効率的に、所得再分配という目的にそって改革ができるかどうかにかかっている。中身にまで踏み込んだ理にかなった社会保障制度の改革がなされるかどうかが、内政分野では、日本の今後の行方を大方決めるといっても過言ではないと思う。
諸富氏は、アメリカで、連邦所得税を「下から」の運動の結実として、憲法改正して20世紀のはじめに導入していることをある種の感動をもって紹介する。
最近話題になることが多い日本国憲法は、最高法規の章にある、第97条で、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と、「将来の国民」に言及している。
我々の世代は、憲法が期待しているように、次世代のことも考えて行動できるかどうか、「社稷」(国家)を次世代に引き継いでいけるかどうか(=「信託」)、がまさに問われている。
経済官庁 AK