他の類似楽器を駆逐してしまう圧倒的存在感、それがヴァイオリン
そして、クレモナのヴァイオリン制作の黄金期、17世紀以降に現れたのが、「クラシック音楽」なのです。
現代では、復元された古楽器を使った「古楽演奏」ということで、これより古い時代のヨーロッパの音楽も復元演奏されるようになってきていますが、いわゆる「クラシック音楽」の一般的な定義の範疇に入る作曲家、モンテヴェルディやスカルラッティ親子、そしてヴィヴァルディ、バッハにヘンデル・・といった人たちは、みな「ヴァイオリンの突然の誕生以降」の作曲家なのです。みな、ヴァイオリンの豊かな響きを知っている音楽家たちです。
逆説的に言えば、ヴァイオリンの豊かな響きを前提とした合奏やオーケストラを使うことが当たり前の時代になって、初めて現在につながる「クラシック音楽」が成立した、といってもよいのです。「あるとき、いきなり完成系でこの世に現れたヴァイオリン」が、いかに他の類似楽器を駆逐してしまう圧倒的存在感があり、その後の音楽の歴史を変えてしまう力を持っていた、といってもいいでしょう。今でもクラシック音楽は、他ジャンルの音楽に比べて、ソロでも、室内楽でも、管弦楽でも、ヴァイオリン族の楽器を多用しますが、そもそもの成り立ちを歴史をさかのぼって考えたとき、音楽と楽器が切っても切れぬ縁であることがわかります。
本田聖嗣