音楽の歴史を書き換えたヴァイオリン
ヴァイオリンのように弦をこすって音を出す楽器のことを、「擦弦楽器」といいます。ルーツははっきりしておりませんが、中東・アラビアを中心に巨大な帝国となった中世イスラム圏の諸国で、盛んに使われた楽器たちが遠い祖先だったと考えられています。東に向かえば中国の馬頭琴などになり、西に向かえば北アフリカや地中海経由でヨーロッパの地に伝来しました。
イスラム諸国からもたらされたであろう擦弦楽器は、様々な試行錯誤を繰り返しながら改良されていきます。現在では「復元された古楽器」として演奏されるヴィオラ・ダ・ガンバなどの「ヴィオール属」という楽器たちもかつては盛んに作られました。現代のように大ホールで何百人、何千人という聴衆を相手にすることはない、宮廷のサロンなどで演奏するときにのみ使う楽器には、音量性能はそれほど求められることはなかったのです。
そして、16世紀の中頃、北イタリアの弦楽器職人のもとに、フランス宮廷からの弦楽器制作の依頼が舞い込みます。まとまった数が必要でしたし、宮廷からの依頼ですから報酬もそれなりだったでしょう、当時の最先端テクノロジーをつぎ込んで、イタリアの制作者たちは弦楽器を作ります。このあたりで、「ヴァイオリン」を筆頭とするヴァイオリン族が作られるようになったと、考えられています。
現存する最古のヴァイオリンは16世紀後半に作られたものですが、絵画の中に確かにヴァイオリンの特徴を備えた楽器が登場するからです。ヴィオール族の楽器と似てはいますが、ヴァイオリン族の楽器は、様々な工夫によって、格段に大きくて、音が魅力的で、圧倒的な存在感と個性を持ち、以後の音楽の歴史を書き換えることになるのです。
少し、長くなりそうなので、この続きは、来週にしましょう。
本田聖嗣