いつもはクラシックの1曲にスポットを当てているこのコラムですが、今日は、気分を変えて、クラシックに欠かせない楽器、ヴァイオリンの誕生にスポットを当ててみたいと思います。
なぜか・・というと、先日、知人が演奏している「アマティ」のヴァイオリンを間近で見せていただく機会があり、その魅力に魅せられてしまったからです。
16世紀ごろ突然ほぼ完全な形で誕生した
よくヴァイオリンというと、名器「ストラディヴァリウス」がオークションでものすごい値段で落札された、とか、ヴァイオリニスト●●さんが使っている楽器は●億円の価値がある、などと、その天文学的な値段ばかりが話題に上ります。
私の専門楽器であるピアノは、ヴァイオリンと比べると大きくて複雑な機構を持った工業工芸品ともいうべき楽器なので、現代に作られた楽器同士を比べるとピアノのほうが一般的に高価ですが、ヴァイオリンの「イタリア古典楽器」と呼ばれる16~17世紀の楽器は、それに代わるものがない、ということで、どんどん値段が上がり、一昔前ですと「家を売って楽器を買う」だったのですが、現在は「家10件売っても買えない」ぐらいのお値段になっているとも聞きます。
でも、それはなぜなのでしょうか・・?
それは、ヴァイオリンが北部イタリアで、16世紀ごろ突然ほぼ完全な形で誕生し、手工業品であるにもかかわらず、かなりの数の楽器が生産され、それらがあまりにも素晴らしい楽器であったために、その後・・・すなわち現代にいたるまで、ほぼ改良なく使われ、そのまま通用するために、「古いものほど価値がある」ということになってしまい、もちろん、古いものは消耗、減損してゆきますから、残存し、かつ状態が良いものはお値段が跳ね上がる・・・というわけなのです。