Connectivityにふさわしい国際秩序
本書は、情報通信のConnectivityを、サイバー戦争を中心に取り上げているが、情報とデータの自由かつ安全な流通は、開かれた国際秩序の根幹である。Google、Appleをはじめ、中国が国家による情報統制を行っているが、人工知能やデータ社会にふさわしい国際秩序こそ、EU、日本、アメリカが主導的に構築すべき分野ではないか。
中国をはじめとする国家資本主義の台頭に対して、西側先進国がそれぞれに、地政学的見地から政策を実施してはならない。グローバリズムの恩恵を受けにくい庶民に配慮した国内経済政策、日本で言えばローカル・アベノミクス。2015年4月、安倍総理が米国議会で行なった演説を読み直すと、グローバリゼーションの影の部分にどう配慮するかの政策に言及がなく、欧米に広がる、内向きな外交を求める世論の転換を促す力強さに欠けるのかもしれない。
自由、無差別、人やデータの往来といった、開かれた国際秩序の価値を揺るがせることなく、庶民が暮らしに希望を持てる政策協調を主導することが、日米同盟に期待される使命であり、また、G7の役割も明確ではないか。そうした広がりなる日本の外交がいかに重要であるか、認識を新たにしてくれる15人の論者からの一冊である。
(経済官庁 YK)