中国の大国外交と日米同盟
東西冷戦終結後のアメリカのアジア外交は、アジア太平洋地域の経済の相互依存を拡大しながら、覇権国あるいは国家連合の台頭を阻止するものであった。また、対ロシア政策は、2015年のロシア連邦国家安全保証戦略に「西側諸国が、政治面、経済面、軍事面、情報面で封じ込め政策を実施している」と記すとおりである。
2011年、オバマ政権は、自由で開かれた国際秩序の普及を願い、アジア戦略を「国際的なルールを遵守する限りにおいて、平和的で反映する中国の台頭を歓迎する」立場に転じたが、残念ながら、現実はそうならなかった。
東シナ海、南シナ海への海洋進出、一帯一路戦略など、中国の大国外交は、着実に進展し、かつ、その路線には周辺国への強制の含みが否めない。書中、中山俊宏慶應大学教授は、日本が「アメリカを自覚的に再選択する」ことにより開かれた国際秩序の構築の基盤として、日米同盟を展開する意義を説く。
防衛研究所の増田雅之主任研究官の分析も詳しい。昨年1月に開業したAIIBは、世界銀行やアジア開発銀行と協調融資を開始し、欧州主要国を含めて80の参加国・地域に達している。
また、2014年11月、北京で開催されたAPEC首脳会議において、習近平国家主席は、Connectivityの強化を提唱し、道路、鉄道、エネルギーにとどまらず、政策、インフラ整備、貿易、資金、民意の5つの分野において、相互依存関係の深化を主導している。その効果は、タイ、インドネシア、ミャンマーなどAPEC地域にとどまらず、ロシア、カザフスタン、トルコ、パキスタンといったユーラシア地域に及び、国ごとに数値化されている。本年5月に北京で開催された一帯一路国際協力サミットフォーラムには、二階俊博自民党幹事長を含め、130か国以上が参加した。
国家資本主義を母体とし、外交に経済力を行使する中国と、日本はどう対応していけば良いのか。オイル・ショック以降、西側先進主要国は、ブレトンウッズ体制とNATO、日米安保条約を基礎としながら、G7が協調して、開かれた国際秩序を深化させてきたが、この10年、中国の台頭により、経済的利益を追求する地政学とのはざまにある。