一雨ごとに気温が下がり、秋らしくなってくると、聴きたくなる作曲家が、ドイツ・ロマン派のヨハネス・ブラームスです。今日は、彼の室内楽作品、「ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 Op.8」を取り上げましょう。
ブラームスは生涯で3曲のピアノ三重奏曲を書いていますが、最初の曲である第1番は、ブラームス21歳の時、1854年に書かれています。
「1854年版」はほとんど演奏されない
確かなピアノの腕を持ち幼少期よりピアニストとして活動し、同時に作曲に意欲を持っていたブラームスは、この時期、長年の友人となるヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムや、尊敬していた作曲家のロベルト・シューマン、そして、その妻で、彼が生涯尊敬と愛情を抱くことになるピアニスト・作曲家のクララ・シューマンなどに出会った時期でした。
おそらく、そういった先輩格の作曲家や演奏家からの刺激を受けて、彼は、自分の得意楽器であるピアノを中心に据えた室内楽、ピアノ三重奏曲を、志に燃えて、作曲したのだと思われます。
しかし、この「ピアノ三重奏曲 第1番」は現在では、ほとんど演奏されません・・いや、正確に書くと、「1854年版」はほとんど演奏されない、といったほうが良いでしょう。
実は、現在ブラームスの「ピアノ三重奏曲 第1番」として演奏されるのは、「1891年版」と呼ばれるヴァージョンなのです。