身の上相談でも、大いに役立つ
ネガティブ・ケイパビリティは、終末期医療だけでなく、著者の日常診療でも役に立つという。
著者の場合、開業医ということもあって、身の上相談的なケースも多く、その中には即座に解決とはいかず、むしろ、ただ悩みを聞き続けるしかないという事例が相当数あるという。
本書で取り上げられているCさんの場合には、夫がうつ病で何度も休職、小学校の息子は不登校、上の娘は習い事が長続きしない飽き性の性格、と心配が絶えない。一人で家族を背負い、切り盛りするCさん自身は動悸と不眠に悩んでいる。主治医である著者は、夫のうつ病に関していささかの助言はできたものの、息子と娘への対処法については、「長い目で見ていくしかないでしょう」としか言いようがなく、長年、付き合ってきた。
8年経った現在、夫は時々抑うつで病休をとるものの、職場に復帰。娘は短大を卒業し社会人に。不登校だった息子はビリッケツ近くで高校を卒業後、何とか私立大学に合格、今は学業よりもパートのレジの仕事に夢中だという。8年前には全く答えが見えずにいたけれど、持ちこたえているうちに、何とかなったという事例である。まさに、ネガティブ・ケイパビリティが力を発揮したケースである。
著者曰く、
「ネガティブ・ケイパビリティを知っていなければ、とっくの昔に、こうした解決法が見当たらない患者から逃げ出していたでしょう」
「どうにもならない問題なので、もう来てもらっても無駄ですと言って、追い払っていたかもしれません」
何もできそうもない所でも、何かをしていれば何とかなる。何もしなくても、持ちこたえていけば何とかなる。今すぐに解決できなくても、何とか持ちこたえていく、これがひとつの大きな能力なのだと受け止めることができるようになると、心が軽くなり、結果として、新しい展望が開けるときが来る。ネガティブ・ケイパビリティは、そんな可能性を持つ力のようだ。
JOJO(厚生労働省)