謎の原因は「恋心」!?
この曲を献呈された、ベートーヴェンの一時弟子であったジュリエッタ・グッチャルディ嬢に、ベートーヴェンは好意を抱いていたのは間違いがなく、かといって、身分違いのため結婚は望むべくもありませんでした。
惚れっぽい体質のベートーヴェンは、第1楽章を、あまりピアノの腕前が良くない彼女でも弾けるように書いた、とも、抑圧された恋心を人知れず抱える気持ちの第1楽章、想像して楽しむ第2楽章、現実にさいなまれる葛藤の第3楽章、という風につづっていたのだ・・・とも想像できます。
事実、彼の死後、遺品の中から「不滅の恋人へ」という、宛先不明のラブレターが見つかっており、現代にいたるまでも、その相手が、誰なのか、判明していません。一説には「エリーゼのために」を各動機となった「テレーゼ嬢」だともいわれますし、このグッチャルディ嬢も候補の一人なのです。
ともあれ、30歳の、即興ピアニストからいよいよ転身して作曲家としてデビューし、野心と、もしかしたら燃える恋心を持ったベートーヴェンは、この謎多き斬新な「幻想曲風ソナタ」を残したのです。