楽譜の出版は「生前禁止」
サン=サーンスはもちろん、このことを自覚していたため、この曲は、彼の生前は楽譜の出版を厳に禁止する、という命令を言い置いていました。演奏も、数回内輪で演奏されたあとは、とりあげられず、彼の死後かなりたってから、やっと公開演奏されることになったのです。
しかし皮肉なことに、このフランス流毒のあるユーモアで貫かれたおしゃれで軽快な曲は、公開演奏の後大人気となり、今ではサン=サーンスの代表曲となっています。
また、パロディに満ちているため、生前禁止された楽譜の出版ですが、第13曲目「白鳥」だけは、オリジナル曲のため許可されていて、こちらも、現在では、チェロとピアノのデュオなどで、定番の名曲として単独で演奏されることも大変多くなっています。
仲間内の「内輪うけ」の楽しみが、世界に文字通り「ウケた」、皮肉な経緯をたどった皮肉満載の、名曲です。
本田聖嗣