東京駅前の博物館を舞台に 日韓の演劇人の才能がぶつかりあう

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標本と剥製を発想源にテーマは「愛」

   今年はどんな展開になるのだろうか。8月中旬の稽古日。かつて東大の教室にあった古い木製の長机と椅子が階段状に置かれたIMTの一室に、演出家の金世一氏、寺田鮎美さん、俳優全員が集まった。その後、事前にまとめられていた参加者一人一人の文章が順番に朗読されていく。その文章とはさまざまな学術標本をモチーフに取り込みながら、皆でストーリーをつないだ物語リレーのあらすじ。IMTに展示されている標本や剥製を発想源に、「愛」というテーマが浮かび上がる50字の短い物語である。

   文章がどんどん読まれ、金氏が質問を投げかけるたびに、俳優たちは新しい言葉や場面を付け加えていく。

   「悲しみから愛を取り戻す」「魔法」「犬」などの謎のキーワードが語られ、そこから次の物語が紡がれていった。普通のオフィスビルにある天井の低い部屋の中だったら、ここまで想像が膨らんだかどうか。

   次に、展示室に全員が移動して体を使った動きに入る。しゃがみ込んだまま電車ごっこのようにつながって標本の間を練り歩く。大きな階段を4本の手足を駆使し、さまざまな体勢で上り下りする。IMTの空間をいっぱいに使い、息が切れて動けなくなるまで肉体を動かす。鍛えられた肉体は雄弁だ。

「ここでまとまった脚本が最終形というわけではありません。これから他のスタッフとも情報を共有し、脚本を練りながら10月に制作に入るという流れです」

   今回は助成金を得た。IMTとしての予算は組んであるが、やはりそれだけでは限界がある。今年は、金氏が選んだ韓国の若手作曲家Lee Young Jaeに音楽を依頼し、音響エンジニアShin Dougwonも呼ぶことができた。

   強い光で展示物を傷めないように照明はシンプルにせざるを得ない。その分音楽と音響効果が重要になるが、増えた予算で音響機材を借り入れることができる。これによって、IMTの空間にしかできない質の高い演劇表現を生み出そうとしているのだ。

   「前は音響といっても、予算がなかったので『効果音』レベルでした。でも、今年は変わると思います」と寺田特任准教授。

   隣国だけに日韓文化交流の機会は多い。だがIMTという特別な場を本当に生かすのなら、単にお互いの作品を持ち寄るのではなく、日韓の才能と才能がスパークするようなパフォーマンスでなくてはならない。

   2017年の「Play IMT」の公演日程は、以下の8回だ。日韓演劇人の才能がぶつかり合う舞台、エネルギーを俳優たちに贈るために足を運んでみてはいかがだろうか。

11月24日(金)18:30
11月25日(土)14:00/17:00
11月26日(日)14:00
12月1日(金)18:30
12月2日(土)14:00/17:00
12月3日(日)14:00

   会場:インターメディアテク(IMT) 東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2・3階

(文・ノンフィクションライター 千葉望 写真・フォトグラファー 渡辺誠)

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール

1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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