日韓でカワウソの保存に乗り出す
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韓国でカワウソの糞を見て興奮

   その後、「ニホンカワウソ研究会」の内田実さんの講演を聴き、ユーラシアカワウソが韓国に生息していることを知った。その調査に同行したのが1989年だった。

「そこで初めて本物のカワウソの足跡を見た。身を隠せる岩があると、カワウソは糞をしていた。それを見つけたときはもう嬉しくて、感動しましたね」

   姿を目の当たりにしたのは2度目のフィールドワークでのこと。夕方、高台でテントを張る場所を探していると、崖の下に川が流れていた。仲間の一人が「ああ、いるじゃない!」と叫び、慌てて水面に目を凝らすと、カワウソが白波を立てて勢いよく泳いでいる。やがて魚を掴まえて陸に上がると、ペタペタと走り出す姿に胸が熱くなった。

   毎年、韓国を訪れるうち、韓国カワウソ研究センターの韓盛鏞(ハン・ソンヨン)博士と、韓国環境部・国立生物資源館の韓尚勲(ハン・サンフン)博士との交流が始まった。

   当時、韓国ではまだ野生動物を保護しようという意識は低く、「日本を反面教師として韓国のカワウソを守っていきたい」と話す韓尚勲さんの言葉が心に残った。

「何だか知らないうちに引きずられていくというか、自分も背中を押されてしまう。カワウソというのは不思議な動物なんですよ」

   だが、ニホンカワウソには刻々と絶滅の時が迫っていたのである。

「まさか自分が生きている間にニホンカワウソの絶滅に立ち会うとは思わなかった・・・」

   危機に瀕していても、どこかでまだ生息していると信じる思いが熊谷さんにあったからだ。

   しかし2012年8月、環境省はニホンカワウソを絶滅種に指定した。

   ニホンカワウソは水中に生息し、里山で暮らす人間とも棲み分けができていたため、本来は絶滅に追いやられる危惧もなかった。

「ところが、高度経済成長で土地開発が進み、河川の護岸工事によってカワウソが棲む岩場がなくなった。農薬や工場廃水が流れ込む川では水質汚染が深刻になり、エサの資源も減っていく。また漁網がナイロン製に変わり、網に絡まったカワウソは嚙み切って逃げることができず、溺れ死んだのです。さらにいえば人間の心の部分、日本人の野生動物や自然に対する関心の無さや意識の低さも絶滅に追いやった要因でしょう」

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール

1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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