2017年8月17日、環境省と琉球大学は長崎県対馬にカワウソが生息していることを発表した。琉球大学がツシマヤマネコの生態調査のために設置した自動撮影装置に一匹のカワウソが映っていたことから発覚した。
ニホンカワウソの「絶滅宣言」が出たのは2012年8月。今回、対馬で確認されたカワウソが絶滅種のニホンカワウソかどうかは判断できないという。専門家によれば、韓国から流れてきた個体かもしれないというのだ。
すでにニホンカワウソが絶滅寸前
国内で最後にニホンカワウソが確認されたのは、1979年6月。場所は高知県須崎市を流れる新荘川だった。それ以来、姿を消した。
一方、同じ仲間のユーラシアカワウソが生息する韓国では90年代に入って保護や保全が叫ばれ、徐々に増える。ただ、疫病が広まると一気に減少する可能性があることから、韓国側から日韓で分散飼育する必要があると指摘されていた。
こうした提言をうけ2017年3月、〈韓国と日本 カワウソのたどった道〉をテーマとする国際シンポジウムが東京で開かれた。長年、韓国でフィールドワークを続けてきた熊谷さとしさん(63)が、公益財団法人韓昌祐・哲文化財団の助成を受け、東京都動物園協会との共催で日韓のカワウソ研究者や飼育関係者らが交流する場を企画した。熊谷さんは、その胸中をこう語っていた。
「カワウソをはじめ希少動物の保全活動を学びながら、それを実践することは『現存する野生動物を、二度と自分たちのようにはしないで欲しい』という、ニホンカワウソからのメッセージだと思うのです」
80年代半ば、もともと漫画家志望だった熊谷さんはアニメーションの制作現場を経て、独立。学習漫画で動物を描く仕事が増え、日本の野生動物について勉強していた。ムササビ、タヌキ、キツネ、ノウサギ、カモシカなど日本各地の生息地を訪れ、生態や足跡を観察した。その度、動物図鑑に目撃マークをつけていた。
「ところが最後に残ったのがニホンカワウソ。"おやっ?"と思って調べると、その頃はもう絶滅寸前だったのです」