1曲あたりわずか2分程度
そんな芸術的最盛期を迎えていたフランスに、フルメリーはやってきて、おそらく、かなり影響されたのでしょう、今日取り上げた「フルート、弦楽とハープのための田園組曲」もかなりフランス風な響きを持っています。
全体は、5つの曲からなり、前奏曲・ガヴォット・サラバンド・シチリアーノ・フィナーレとなっています。タイトルだけ見ると、バロック時代に流行った、舞曲を並べた「舞曲組曲」のスタイルを意識して作られていますが、その響きは非常に近代的で斬新で、「新しいのに懐かしい」雰囲気を持っています。
もともとこの曲は、近代になってオーケストラの楽器から独立して独奏楽器となったフルートを主役として書かれています。J.Pランパルなどの偉大なフルーティストを輩出したフランスはフルートが主役となる作品が多く生み出される「フルート・レパートリー先進国」で、そういった意味でも、フルメリーのこの曲は、どこか「フランス風」です。
初稿はフルートをソロに、ピアノを伴奏として書かれていましたが、後に、彼は伴奏部分を弦楽オーケストラとハープの編成に書き直しました。すると、より一層、「広がる田園風景」が見えるほどのゆったりしたサウンドになり、大変人気が出ました。ちょっとした「フルート協奏的組曲」と考えてもよい弦楽伴奏版は、ピアノ版よりも演奏されることが多くなっています。
組曲、といっても1曲あたりの演奏時間はわずか2分程度、全部合わせても12分に満たない、かわいらしい「組曲」です。夏のリラックスしたお休みの時期にゆったりと聴くのに、大変おすすめの1曲です。
本田聖嗣