聖武天皇が耳にした音が今、よみがえる 日本と朝鮮半島、久遠の音楽の歴史

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10月から演奏会

   こうして正倉院御物の楽器復元とコンサートなどの普及活動を続けてきた野原だが、ひとつ悩みがあった。昭和の時代に進めた復元では資料が揃わず、細かいところは想像で作るしかなかったことである。自分たちの取り組みが本来の音に近づいているのかどうかがわからない。だが、2010年に奈良県各地で開催された「平城遷都1300年祭」以降、正倉院に残された膨大な資料を検討するうちに、より具体的な構造がわかってきた。たとえば本体の厚みも正確な数字がはじき出された。

「今、復元中の箜篌で胴の部分を3ミリにまで削ったのも、その成果です。正倉院に残された資料は、紙が貴重だった時代で表にも裏にも文字が書かれているものが多いのです。表裏をくまなく研究しようにもあまりにも膨大な量があるので、まだ手つかずのものも多いですね」

   まことに、正倉院は「宝物」の倉である。

   今回復元された箜篌はどのような形でお披露目されるのだろうか。

「新作を若手の作曲家に委嘱して、それをハーピストの井上麗(うらら)さんに演奏していただくことになっています」

   まず、2017年10月1日(日)に三重県文化会館中ホールで、11月18日(土)には滋賀県米原市の米原市民交流プラザベルホールにて、『正倉院の響き』シリーズとして演奏される。両方とも、野原が日本音楽史をひもとく講師を務めることになっている。それ以降もさまざまなコンサートで箜篌の調べを聴く機会があるだろう。

天平時代、聖武天皇が耳にしていた音が現代に蘇るのだ。

(文・ノンフィクションライター 千葉望/写真 渡辺誠)

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール

1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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