今年はどんなドラマが生まれるか、「第99回全国高校野球選手権」が2017年8月8日開幕する。
注目の早稲田実業が西東京大会で敗退、107本のホームランを持つ清宮幸太郎選手が出場しないのは残念だが、毎年のように新たなヒーローが出てくる。熱戦の下、あなたの郷土の代表校はどこまで勝ち進むか。今回は甲子園にまつわるエピソードや高校野球の見方について3冊を紹介したい。
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松井5連続敬遠、その後の軌跡
「甲子園が割れた」とは、まさに的を射た表現だ。25年前の第74回大会2回戦の星稜対明徳義塾戦で「事件」が起きた。
明徳義塾は星稜の4番打者・松井秀喜選手を5打席連続して敬遠し、1度もバットを振らせなかった。3対2で勝ったが、正々堂々と勝負をしなかったと非難にさらされた。擁護する声もあったが、高校野球のあり方をめぐり議論が巻き起こった。
『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(著・中村計、新潮社、562円)は、その「事件」後の両校のナインの軌跡を丹念に追ったノンフィクションである。松井は巨人から大リーグに渡り期待通りに活躍したが、ともに戦った選手たちや監督にとって甲子園とは何だったのか。第18回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した。
野球引き立てるアナウンサーの名調子
「あり得る最も可能性の小さい、そんなシーンが現実でーーーす!!」。2007年の夏、甲子園の決勝戦で劇的な逆転満塁ホームランが飛び出したとき、こんなハイテンションな実況をしたのがNHKの名物アナウンサー小野塚康之さんだ。
「野球がなくては生活できない」ほど野球好きの小野塚さんが、30年以上も語り続けてきた熱い思いを1冊の本にしたのが『甲子園「観戦力」をツーレツに高める本』(著・小野塚康之、中央公論新社、929円)である。
甲子園で活躍した「怪物」「アイドル」「名監督」、さらに「控えの選手」らから得た秘話やエピソードを惜しげもなく盛り込んで「甲子園を9倍楽しむ方法を教えます」と訴える。
「甲子園のアイドル」が語る女子の野球
『甲子園進化論 女子の力で変わる未来の甲子園』(著・太田幸司、幻冬舎、1512円)の著者・太田幸司さんは元祖「甲子園のアイドル」である。青森県三沢高のエースとして1968年夏から69年春・夏と3大会連続で甲子園に出場した。最後の夏は決勝戦で延長18回引き分けとなり、翌日の再試合で敗れたが、色白の整った顔立ちで「コーちゃん」ブームが起き大変な人気となった。
その「コーちゃん」がいま日本女子プロ野球機構スーパーバイザーとなり、女子野球と高校野球の今後を期待して甲子園大会の未来像を語る。
最近は女子マネジャーが多くなり、甲子園での練習参加も条件付きで認められた。マネジャーだけのことではない。女子による硬式野球部も増えてきて、全国高校女子硬式野球選手権大会や選抜大会も開催されている。だが、甲子園のグラウンドでは行われていない。あこがれの夢舞台、女子の力で「甲子園」は変わるだろうか。