2017年5月、小さな鈴の音(以下鈴の音)のメンバーが向かったのは万里の長城である。
「万里の長城マラソン」は今年16回を数えるマラソン大会で、世界から約200人が参加した。鈴の音からは、ゴビ、サハラの両砂漠を完走した村木さんと中国人の視覚障がい者がエントリー。伴走者は中国と韓国から3人。さらにイギリスとアメリカからもそれぞれ1人が、伴走の練習をしたいと参加した。
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今年5月上旬、(一社)小さな鈴の音は、第16回万里の長城マラソンに参加した。(写真・Small Bell Sound)
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普段は都内の会社でITシステムエンジニアとして働く金基鎬(キム・ギホ)さん。視覚障がいをもつ韓国男性がサハラ砂漠を完走した体験記『神の息 サハラ』を読んで触発された。(写真・フォトグラファー 渡辺誠)
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2011年、日韓両国旗を背負ってナミビアのサハラ砂漠マラソン250Kmを完走。2013年には日本人全盲ランナーを伴走し、チリのアタカマ砂漠マラソン250kmを完走し、話題になった。完走すると「完走賞」としてメダルが授与される。(写真・フォトグラファー 渡辺誠)
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万里の長城は、階段の段差、面の奥行きも同じものがない。 伴走者は、段差があると「up !」、大きな段差には「big up !」 と声をかけ、視覚障がいランナーに伝える。(写真・Small Bell Sound)
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視覚障がい者をサポートする伴走者が少しずつ増えている。 万里の長城マラソンには韓国と中国から3人。米国、英国から 各1人ずつ参加した。(写真・Small Bell Sound)
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世界から約200名が集まった。過去16回開催された万里の長城マラソンで初めて視覚障がい者が参加した。大会関係者から大きな拍手を浴びた。(写真・Small Bell Sound)
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公益財団法人韓昌祐・哲文化財団の助成事業として8月25日から2日間、富士山登山に挑戦する。(写真・Small Bell Sound)
いくら足を上げても次の段差に届かない
万里の長城マラソン史上で、視覚障がいのランナーが参加するのは初めての出来事だった。参加者たちの前で紹介され、拍手を浴びたという。「RUNNING STREET 365」というWebサイトには、万里の長城マラソンのレポートが掲載されている。鈴の音メンバーの奮闘ぶりにも触れており、その姿が他のランナーに刺激を与えた様子が記されている。
気温28~30C、乾燥の中、ペットボトルの水を飲み干してしまうほどだったという。しかも、村木さんによると、万里の長城コースは、階段の段差も、階段面の大きさも、ひとつとして同じものがなく、かなり歩きにくかったという。
「段差に関しては、いくら足を上げても、次のステップに足が届かない所もあり苦労しました。スロープも手すりがなく、難しいコースでした。しかもアップダウンが激しいので、筋肉痛がひどかった。ゴビ砂漠を走っても、あんなに痛むことがなかったのに」
でも、楽しいこともたくさんあった。
イギリスとアメリカから参加した伴走者がいた。村木さんは彼らとも一緒に走った。最初はさすがにぎこちなかった。それでも進むほどにコツをつかんでいくのがわかり、2人には「ベスト・パートナー!」と声をかけた。来年は、イギリスとアメリカの視覚障がい者が、マラソンに参加する可能性があるという。
「いろいろな国の視覚障がいの人がレースに参加するのは嬉しい。そのお手伝いができるのは、なにより素晴らしいことです」と金さんが言う。
タイムは、鈴の音のメンバーは同時で、8時間30分34秒。
視覚障がい者の中には、走ることはむろん、動きづらい人も多く、どうしても家にいる時間が長くなるという。鈴の音プロジェクトが、そういう人たちへの刺激にもなればと考えている。