枕もとで悪魔がヴァイオリンを奏でて......
ヴァイオリンがどのような革命的な楽器だったか、ということを書くとものすごく長くなりますので、またの機会に、そして、少しずつ分けて書いていきたいと思います。
今日は、その「革新的な発明品」であるヴァイオリンの名曲を1曲取り上げておきましょう。
ヴァイオリンの誕生地であるイタリアのバロックの作曲家、ジュゼッペ・タルティーニのヴァイオリンソナタ「悪魔のトリル」です。
優秀なヴァイオリニストでもあったタルティーニは、ある夜、夢の中で、自分の枕もとで悪魔がヴァイオリンを奏でているのを聴きます。その技巧は悪魔だけに大変見事で、演奏されている曲も聴いたこともない華麗な曲でした。タルティーニは目覚めるとすぐにその曲を忘れないように書き留めたといいます。その難技巧のパッセージ・・上でトリル(反復する装飾音)を演奏しつつ同時に下でメロディーも奏でる・・・を第3楽章に織り込み、全3楽章のヴァイオリンソナタ ト短調を書き上げ、このエピソードから、このソナタは「悪魔のトリル」という名で知られています。
作曲されたのは、1750年ごろ、といわれていますが、21世紀の現代のヴァイオリニストにとっても演奏は大変難しく、ヴィルトオーゾ・レパートリーとして、広く演奏されています。
ちょうど、16世紀中ごろの発明品であるヴァイオリンが、現代のコンサートホールでも堂々と音を奏でているのと似ているかもしれません。
真に素晴らしい作品は、時代を大きく超えて、人々に愛されつつ生き残るのです。
本田聖嗣